ハイキック・ガール


琉球空手とハイキック・ガール!②

現れた八木明達先生は剛柔流空手の十段、達人の風格でした。
次々と不躾な質問をする僕に「西さん、思い切り突いてきてください」
えっ?
一瞬戸惑いましたが、 「六十歳過ぎの空手十段を思い切り突く」
そのシチュエーション自体が漫画的で映画的じゃないか、こんなチャンスはめったに無い。

気合を入れて全力のストレートを出しました。
明達先生の身体は全く動かず、左手だけが数センチ下がったかと思うと、
僕の右手は弾き飛ばされていました。とんでもなく固い金属バットを殴ったような激痛でした。

先生は微動だにせず笑っています。
「今度は蹴ってみて下さい」
僕だって空手カジリ歴は25年、特に蹴りには自信がありました。
突き刺すように本気の前蹴りを蹴りこみました。
ガコン! 足首からスネに激痛が走り、蹴ったはずの足は地面に落ちていました。
先ほどと同じく、明達先生は、ただ右腕を数センチ下げただけでした。
呆然とする僕に一言、
「空手はヒジから先を鍛えていれば、まあ大体は大丈夫です」。
そして「こんなのもありますよ。」と、立ったまま足の親指で僕の足の
甲を押さえた
のです。
味わったことの無い激痛! 全く動けません。

「後は顔を叩けばいいだけです」、そう笑う空手十段。
これが空手なのか…、僕自身が知っている空手とは全く違うものでした。

翌日は、松村宗棍先生の流れを汲むという小林流の先生を紹介して頂きました。
その先生の型がまた凄かった。
体の内部がブルンブルンと震えているような、周りの空気が波動で揺れているような、
そんな風に見えました。

自分は、空手のカの字も知らなかったのか…。
こんなことで世界に誇れる空手映画なんかできるのか?


これから先の道の遠さを実感して呆然としました。

と同時に、やっぱり空手は凄い! カッコイイ! これは絶対に映画になる、
確信しました。

松村宗棍先生は薩摩示現流剣術を学んで、
一撃必殺の首里手を完成させたのだそうです。

ならば! と思い立ち、鹿児島の示現流の道場も訪ねました。

道場内に立てられた木を相手にひたすら木刀を打ち下ろし続ける「立ち木打ち」という稽古。
「ギェーッ!」「チャーッ!」という鳥のような
獣のような叫び声が響き渡ります。
見ているだけで鳥肌ものの稽古でした。
頭で怖いと感じるのではなく、本能的に「逃げたい!」と感じる恐怖。

松村先生はこれを見て、わが手を刀にしようと思ったのか…
これと素手で戦おうと考えたというのは。とても信じられませんでした。
なんともロマン溢れる映画的な話です。

琉球時代から伝わる沖縄の空手、そして薩摩示現流剣術。
空手の本質の端っこ、そして松村宗棍先生の人生の一端に触れたような気がしました。

これで何とか東京へ帰れる
やっとそう思えたのです。

(つづく)

※沖縄公開を記念して、JK FAN 7月号に収録された
西冬彦監督インタビュー「琉球空手とハイキック・ガール!」を掲載しています。

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by highkick-girl | 2009-08-15 11:21 | 制作日記(DIARY)
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